01. はじめに

こちらでは、ミックスリーフとして販売する上での、チコリーの栽培についてご紹介いたします。
チコリーの栽培自体は特に難しいところは無く、家庭菜園やベランダでの栽培も比較的簡単にできます。

それでもやはり、生業(なりわい)として、量を栽培し、効率的に処理し、販売にまで完結させるには、解消しなければならない課題が常にあります。
もちろん、チコリーの栽培に限ったことではなく、農業や農業以外のビジネス全体に言えることですが。

2024年4月現在、まだまとまった量の生産体系を作れたとは言い難い状況です。
しかし、栽培量は確保する方法が確認できたことなど、前進できたこともあり、日々の努力を重ねるしかありません。

各コーナーの内容について

ご紹介している各コーナーの記述内容は、誤りの訂正、表現の修正、追加の記述などを必要に応じて行っています。
なお、大きな修正変更の場合はその内容を明記させて頂きます。

02. タネの購入

栽培しているタネのパッケージをご紹介します。

栽培しているチコリーの主力のタネは中原採種場さんのベビーリーフシリーズの中の「チコリー(トレビス)」です。
商品にしている収穫量の90%は、このタネからと考えられます。
露地栽培でのまとまった栽培に踏み出せたのは、このタネのおかげです。
このタネから栽培してみると、バリエーションに富んだ葉の色や形に成長します。

トレビスは「発芽率80%以上」と表示されている通り、安定的な栽培量の確保ができるようになりました。

以前から使ってきたイタリアの種苗メーカー「FRANCHI」社と「HORTUS」社などのタネもバリエーションを確保するためには欠かせません。
今後も、栽培状況を観察しながら、導入を続けます。

03. タネをまく

一粒でも多く発芽するように、いろいろ試しました。
以前は基本的な方法通り、育苗用セルトレイに培養土を入れ、そこで発芽させた苗を定植していました。
しかし、それでは時間もコストもかかります。
何とか、発芽率も悪いタネですが、直接、フィールドに撒いて効率的に発芽させられないか?
そして、今の方法に行き着きました。

step01 事前準備
 

01.タネをジベレリン液剤に漬ける
発芽を良くするため、200ppmに調整したジベレリン液剤に使う量のタネをおよそ24時間漬け込みます。
ジベレリンはタネの胚で作られる植物ホルモンの一種で、植物のタネには必ずある物質です。
休眠状態のタネを発芽させる大きな役目を担っています。

※ 発芽率が良くないタネを、より多く発芽させることができるとは実証できていません。

02.室内で空気乾燥させる
ジベレリン処理終了後、容器に移し、およそ一日空気乾燥します。
完全に乾燥させても構いません。

室温など条件にもよりますが、水分の残り方で、発根してくるタネも出てきます。

03.ZIPLOCKに入れて加湿し発根をうながす(冬~晩春期)
芽より根が先に出ます。
冬から春にかけての期間は乾燥後、ZIPLOCKに入れ、適度に加湿し、
発根を促します。
しかし、なかなか発根してこないケースや一度発根しても戻ってしまう時などもあり、今後の観察、研究が必要です。

※厳冬期(12月中旬から翌年2月中旬頃)は直播作業はお休みです。

04.フィールド(圃場)の準備:マルチホールの増設
露地栽培での葉物野菜の基本的な方法では、株間をある程度確保することが必要とされています。
しかし、チコリーの「強さ」に甘え、マルチホールを増やして密植栽培により、収量のアップを図っています。

マルチを敷くことは、保水と雑草の発生を少しでも抑えるために必要となります。

ちょっと驚きました!発芽率はこんなにも差がありました。

2024年10月にタネ蒔きを再開するにあたり、ナカハラさんのトレビスとカステルフランコやグルモロベルデなど
7種のタネをミックスしたものを、ジベレリン浸漬処理を別々に行い、発根状態を比較してみました。
量目には差がありますが、その他の条件は全く同じです。
ジベレリン処理終了後、3日後の状況です。

今回から、給水にオキシドール(過酸化水素水)を添加しています。
(2024年11月2日 追記)

step02 タネまき実行から発芽まで

01.種まき用培土にタネをまぜる
市販されている「種まき用培土」に、step01で事前に準備したタネを全量入れて、よく混ぜます。
土の量は500mlの計量カップで7杯使います。この量が長さ20mの畝(うね)全体に
行き渡る適量でした。

02.タネまきの実行
できるだけ速やかにマルチを敷いた畝のホールにスプーンを使って入れます。
もちろん、計量しながら行うことはできませんので、なかなか丁度よくまくことはできません。
必ず、全量をまき切ります。
タネまき終了後、たっぷりと水やりをします。
理想的には天気予報で雨が出ている直前に実行できるのがベストです。

03.不織布で乾燥を防ぐ
不織布で覆います。
発芽には水分が欠かせません。
特に海岸に近いエリアですから、強風による乾燥が心配です。
不織布が飛ばされないよう、両側に土を軽くかけ、しっかりと固定します。

04.発芽
発芽がそろい、土壌への活着が確実になっても、 不織布の上から給水を続けて、
苗が育つまで外しません。給水は不織布の上から行います。

なお、地温が25℃を越えるような高温になると、発芽ができなくなります。

05.発芽後の管理
不織布の中でさらに生育させ、ある程度の大きさになるまで、注意深く待ちます。

給水の頻度は減らすことができますが、乾燥により、発芽した株が枯れる事がありますので、油断は禁物です。

雨の力を借りながら、枯らすことの無いように乾燥防止を徹底します。

06.本格栽培へ進行
ここまで生育してくれれば一安心です。
給水の頻度は下げます。

このまま成長してくれますが、収穫可能になる直前まで、不織布は外しません。

密植栽培です。ミックスリーフとして効率的に量産できるよう、
この方法をとっています。

2023年7月上旬は高温プラス少雨で大変なことに!!

九州・中国地方では線状降水帯による豪雨被害が多発しているのに、こちら房総半島はこの一週間全く雨がありません。
しかも、連日、35℃にせまる猛暑、ジョウロでの水やりでは限界で、折角、発芽してくれたのに、枯れる小さな株が続出です。
水切れではなく、給水後、不織布がかかっていても、
高温のため、マルチホール内の水分がお湯になり、
苗が死んでしまうのではないかと考えました。

日陰を作るため、持っていた、遮熱ネットを使ってみました。

2023年7月4日にまいたタネから発芽した株たちは、10日の段階で、順調に生育してくれています。
もっと早く気が付かなければと、枯れた株たちに申し訳なさでいっぱいです。

04. 栽培から収穫

春から初夏にタネをまいた時
タネまきから約1カ月後に収穫出荷できる位に成長します。
ただ、季節の新緑のイメージ通り、ライトグリーン主体の生き生きとした葉が
繁ります。

商品としては、以前から管理栽培してきた株からの葉を混ぜて、出荷します。

秋にタネをまいた時
新しく育った葉にも、生育途中から葉脈にくっきりとしたカラーが入るものが多くなり、バリエーションに富んでいます。

季節性というよりも、気温などの条件によるものかと思います。

管理生育した株
ミックスリーフとして収穫出荷できるのは、管理している株の中の新しい葉
だけになります。品種により、生育の過程に差はありますが、同じような管理で
栽培することができます。

チコリーの品種ごとの葉の形状とデザインの豊かさが商品としてのミックスリーフ
の広さと奥行きを支えます。

肥大化した株からの葉
チコリーのミックスリーフは、グリーンの葉が主体の構成になりますが、生育状況の範囲内で、大きく肥大化した株から収穫できる色鮮やかな葉も含まれます。

アントシアニンが生成されることで、濃いピンクやイエローに彩られますが、
そのメカニズムは分かっていても、栽培技術では対応できていません。
現在、その方法を研究中です。

昆虫の食害もありますが、農薬は使いません
密植栽培で、防虫ネットも今はほとんど使用しませんので、キク科を食べる昆虫の
発生は必ずあります。
しかし、同じ葉物野菜でも、アブラナ科を食べるキスジノミハムシやコナガなどに
比べれば、まだ品の良い(?)方で、見つければ処分すればいいことです。
結果として農薬を使うことはありません。

むしろ、食害された葉がある株の中からは、アントシアニンによる鮮やかな葉を収穫できることが多く、注目しています。

収穫
最大の関門はこの仕事です。
収穫に適した大きさに成長した株をピンポイントで集めるのが理想的な手順かと
思いますが、現実にはなかなかうまくいかないのです。
正確にお伝えするのは難しい所です。

株を刈る時間は機械を使って短縮できますが、選別に多くの最も時間がかかります。

栽培量は確保できていても、商品としての生産量が思うように増やせないでいます。
何としても解決しなくてはならない大きな課題です。

05. 全く問題が起きないわけではありません

商品として、皆様にお買い求めいただく上では、見た目での安心感や異物の混入防止は、当然、大切なポイントです。
① 赤い斑紋が出ます
  枯れたり変質したりすることはなく、中原採種場さんのタネのカタログにも、この斑紋が出ることが説明されています。
  しかし、この斑紋の正体はまだわかっていません。
  
見た目もよくないので、少量の発生では販売の対象とさせていただきますが、
  特に春期に管理していた株と一部の特定品種で多発する場合があります。

② 異物混入の可能性
  チコリーの品質などには直接の関係はありませんが、当然、畑には多くの生き物が生息しています。
  
  共存状態になる生き物で、クモは成虫は混入を避けられますが、その抜け殻が、結構、葉についています。
  また、1ミリ程度のカタツムリがこれも結構多産し、収穫の際に落としていますが、
  この、2種類の「異物」を確実に取り除くことが必要です。

06. まとめとして

ご覧いただいた通り、ラディッキオ・ロッソ風の葉の確保以外に、特に難しい栽培技術は必要ありません。

ただ、この仕事は栽培から管理、収穫、分別、製品化、事務作業、ロジスティクス、対マーケット、経理までのすべてが機能させることが必要となります。

例え、収入が増えるからと、ブラック企業状態になっては、年齢から言っても持ちません。

多菜畑農園がチコリーの栽培をオープンにご紹介しているのは、チコリーという野菜の認知度が少しでも上がり、
裾野が広がってくれればと希望しているからです。
もちろん、おこぼれが得られればうれしいです。

※飯豊山の石碑の画像は、ナッキー39さん発表:新潟県の三角点を訪ねるブログ(2021.11.24)万治峠を経て高井峠
 より借用しました。

万治峠について

新潟県東蒲原郡旧鹿瀬町は、現在の、阿賀町鹿瀬になります。

万治峠は、国有林管理の役割やハイキングコースとして整備され、通行可能です。
実川集落には、重要文化財に指定されている、旧五十嵐家住宅があり、小川芋銭や安部能也が滞在したようです。

万治峠の「飯豊山」の石碑の建立年は、私の記録では元治元(1864)年としていますが、嘉永3(1850)年とされている資料もあります。