チコリーコレクション

01. チコリーの品種概要

チコリーはキク科の多年草(大体は2年)で、その原産地はヨーロッパ地中海沿岸から中央アジア、北アフリカにかけての地域と言われています。
いつ頃から栽培が始まったのかは不明ですが、約4000年前のエジプトのパピルス文書の中に記述があり、また、古代ギリシア時代には「チコリー」という名詞が記録されているそうです。

野菜として種から栽培している株は、品種ごとに姿は違っても、丈の低い普通の植物ですが、株として花芽を持とうとしてくる段階(抽苔株)になると、株の中心から上部に伸びて木質化し、1.5から2.0メートル程度まで伸長します。花はきれいな水色です。

チコリーの品種を整理してみました。わかりやすくお示しすることを目的にしています。

各コーナーの内容について

ご紹介している各コーナーの記述内容は、誤りの訂正、表現の修正、追加の記述などを適宜行います。
大きな修正変更の場合を除き、履歴を明記することは、控えさせていただきます。

チコリーの品種については、一体、何種あるのかを確定できる資料は見当たりません。

商品として、販売することを前提に栽培するには、同じチコリーでも品種による生育上の違いは、商品構成を考える上で、大切なところとなります。品種特性をつかむ=分類は以外に重要です。

また、新たに品種改良され、チコリーの新しい品種として、発表されるものもあります。
(上記の分類図の「ロッサ ディ ベローナ タルディーバ」、「ヴェルドーロ」がそれに当たります。)
どのようなプロセスで新品種が誕生、発表されるのか、今後の中でお伝えできればと思います。

02. 主要品種のチコリー(トレビス)


多菜畑農園は2022年からようやく栽培量の確保の目途が立つようになりました。
しかし、2023年現在も100%完全な量産方法が確立できたというところにまでは至っていません。
もう少しなのですが。

効率的に生産量を確保するため、栽培は密植状態で行っています。
そのため、過湿からの葉の劣化変質、昆虫の食害の広がりなどの支障が発生します。
本来、葉物野菜の露地栽培は、概して成長に応じて、間引きして通気を良くしながら、育成させるのが普通かと思います。

密植栽培に耐え、商品化できる葉を作ってくれるチコリーたちにただただ感謝です。

また、密植栽培をしたことで、光合成のサイクルがうまく回らなくなり、クロロフィル(葉緑素)の分解につながり、結果としてアントシアニンによる鮮やかな赤色系(または黄色系)の葉が現れます。
ミックスリーフとしては、中心部の新しい葉だけを収穫出荷しています。

03. 多菜畑農園で栽培したトレビス以外の品種

チコリーのミックスリーフのセールスポイントは葉の色や形の「バリエーションの豊かさ」が第一と考えています。

同じ植物の一品種とは思えない色や形のある野菜。
同様な品種と言えば、レタス類ですが、ミックスリーフでの販売を前提にした場合、露地栽培では難しいところがあります。

バリエーション豊富な「チコリーのミックスリーフ」を構成するため、ホビー用とされていますタネからの品種も栽培しています。

ロッサ ディ トレビーゾ プレコーチェ
/ROSSA DI TREVISO PRECOCE

葉の形状:勺(しゃく)状の葉がまとまって結球し、ラグビーボールのような形になります。

葉のデザイン:パープルまたはブラウン系の葉のカラーベースに縦の葉軸とそこから斜め上方向に分岐して伸びる白い側線は独特で、

ほかのチコリーには見られない、特徴的な葉のデザインです。
ラディッキオ ロッソの一品種プレコーチェとして知られています。

ロッサ ディ トレビーゾ タルディーボ
/ROSSA DI TREVISO TARDIVO

葉の形状:プレコーチェと比べ、細長く剣状になり、
成長するにつれ、先端がカールするものが多くなります。
完全に結球することはありませんが、中心部に向かってまとまった状態になります。

葉のデザイン:カラーはグリーンが大半ですが、ブラウン系の株も見られたり、葉軸がピンク系になるものなど変化に富んでいます。
ラディッキオ ロッソの一品種タルディーボとして知られています。

ヴァリエガータ ディ カステルフランコ
/VRIEGATA DI CASTELFRANCO

葉の形状:均一性はなく、いろいろな形の葉が生育します。

葉のデザイン:ライトグリーンにブラウンやパープルの斑紋が多様に入ります。光合成を遮断すると、

ライトイエローにパープルの斑紋に変化します。自然栽培では珍しいです。
ラディッキオロッソの一品種カステルフランコとして、軟白栽培された株は高級品として、販売されます。

ヴァリエガータ ディ ルシア
/VARIEGATA DI LUSIA

葉の形状:カステルフランコに比べ、丸みを帯びた葉が多いように思われます。

葉のデザイン:カステルフランコとほぼ同じですが、結球する分、自然な遮光状態になり、イエローまたはピンクの鮮やかな葉がやや多く見られます。

カステルフランコの結球種とされています。
次にご紹介するヴァリエガータ ディ キオッジャと区別が難しい株も多く、非常に近い品種に感じられます。

ヴァリエガータ ディ キオッジャ
/VARIEGATA DI CHIOGGIA

葉の形状:ルシアに似て、丸い葉が中心ですが、中原採種場さんの「トレビス」のような多様な形状も見られ、もしや、「トレビス」同品種とも思われます。

葉のデザイン:様々な紋様が見られます。特にルシアに近い印象の株は、斑紋の面積が広く、遮光状態になると、ピンクの濃さが強い印象です。

タネのパッケージには結球種として紹介されていますが、完全には結球しない「半結球」状態の株も多く見られます。

オルキデア ロッサ
/ORCHIDEA ROSSA

葉の形状:丸みのある三角形を縦に少し伸ばしたような葉が多く、内側にカールするものも見られます。

葉のデザイン:葉軸は濃いピンクまたは白が多く、そこから分かれる葉脈に沿ってピンクになるものが多いようです。

いずれにしても、他の品種同様、決まった形状もデザインもありません。

タネのパッケージデザインのような、全体が赤になるような株はあまり見たことはありませんが、状態によっては、他の品種には現れないような、鮮やかな赤になるものがあります。
品種としては、後にご紹介する、パラ ロッサの仲間とされています。

ロッサ ディ ベローナ
/ROSSA DI VERONA

葉の形状:丸みのある三角形を縦に少し伸ばしたような葉が多く、内側にカールするものも見られます。

葉のデザイン:葉軸は濃いピンクまたは白が多く、そこから分かれる葉脈に沿ってピンクになるものが多いようです。

早生種と晩生種がありますが、早生種は「precoce」と明記されている一方、晩生種は「a palla」(結球種)と表示されています。
ほぼ、オルキディア ロッサに近い品種かと思われます。

グルモロ ベルデ
/GRUMOLO VERDE

葉の形状:楕円形が主体です。比較的変形が少ないです。

葉のデザイン:特徴的にやや光沢を持ったダークグリーンがとても鮮やかな色彩を放ちます。

残念ながら、発芽率が悪く、また、春夏の時期は異色斑紋が出やすいことから、収穫量の確保が今は難しくなっています。
2023年から増産の試みを始めました。

イタリコ ア コスタ ロッサ
/ITALICO A COSTA ROSSA

葉の形状:長軸の葉が複雑に切れ込んだような、それも、とても多様な形になり、とてもユニークです。

葉のデザイン:葉軸は濃いピンクで、葉の色はオーソドックスなグリーンになります。

中原採種場発売の「チコリー(イタリアンレッド)」も同一品種と思われます。
別途ご紹介の「カタローニャチコリー」群のカテゴリーに含まれるようです。

セルバチカ ダ カンポ
/SELVATICA DA CAMPO

葉の形状:長軸で変化に富んだ深い切込みを持つ、複雑な葉の姿をしています。

葉のデザイン:葉のカラーはグリーンの単色、葉軸もオーソドックスな白が大半ですが、稀に根元に薄いピンクを出す株があります。
(Selvatica da campo rossa という名称でタネが発売されています)
成長するに連れ、葉は地面に這うように伸びる傾向が強くなり、概して上に伸びるカタローニャチコリー類とは異なっています。
同じ「セルバチカ」と名付けられたアブラナ科品種の「ルッコラ セルバチカ」の株とも似た印象の姿です。

カタローニャ ギガンテ ディ キオッジャ
/CATALOGNA GIGANTE DI CHIOGGIA

葉の形状:先端が三角状で深い切込みを持った長軸の葉です。切込みの形状は株によってまちまちです。

葉のデザイン:グリーンの単色がほとんどですが、ときにカステルフランコに似たブラックまたは濃いブラウンの斑紋を持つ葉が現れます。

キオッジャは地名で、イタリア野菜の品種名の多くに栽培の中心・起源の地名が使われているようです。
チコリーのヴァリエガータとこのカタローニャ以外に、キャロット、ビーツにも「キオッジャ」と付けられた品種があります。

カタローニャチコリーについて

Catalogna chicory(カタローニャチコリー)はリーフチコリーの品種群ですが、結球することはなく、やや細い刀剣状の葉が上に伸びていくように成長します。
葉の切込みの形状や切込みが無いもの、葉軸がピンク色になるものなど、いくつかの品種が見られます。

また、肥大させた株の花茎を縦に細く裂いてアンチョビドレッシングなどであえるサラダは、早春のローマの郷土料理として知られていますが、これに使うリーフチコリーの一品種Puntarella(プンタレッラ) もこのカタローニャチコリーの一品種です。

「カタローニャ」はスペイン北東部の「カタルーニャ(Cataluña)」地方を起源とする品種群という事ですが、
現在のスペイン現地では実際に栽培されているのかどうなのか、調べてみたいと思います。

パラ ロッサ
/PALLA ROSSA

葉の形状:生育初期は他の品種と同じ形ですが、大きく成長するにつれ、紫キャベツのように中心部がしっかりと結球します。

葉のデザイン:結球状態になった中心部の葉は鮮やかなマゼンタ系のカラーになります。葉脈はほぼ白です。

しっかりと結球しますので、ミックスリーフとして出荷するには、分解することになり、時間を要しますが、効率的に量が確保できます。

パラ(palla)は結球という意味です。早生種など、何種類かの派生種があります。

ビアンカ ディ ミラノ
/BIANCA DI MILANO

葉の形状:先のとがった幅の広い剣のような印象で、
一部に先端が丸みを帯びた形になるものもみられます。
結球種ですが、次の「パン ディ ズッケーロ」に比べ、やや結球が緩やかな印象です。


葉のデザイン:葉のカラーはほぼ均一のライトグリーンです。弱い光沢を持つ株もあります。
多くの観察例はありませんが、遮光状態になったものは、根元に近い部分がイエローになることが見られます。
以前使用していた、「ミックスラディッキオ」の構成種としての栽培のため、数が少なく、あまり詳しくはお伝えできません。
独特の形なので、ミックスリーフのラインナップに加えるのもいい感じがします。

パン ディ ズッケーロ
/PAN DI ZUCCHERO

葉の形状:「ビアンカ ディ ミラノ」によく似ており、生育初期の株は見分けることができません。やや、幅が広いように見えますが、株により大差ないものもあります。
成長するとしっかりと結球し、ハクサイ状になります。

葉のデザイン:「ビアンカ ディ ミラノ」と同様のライトグリーンです。
「パン ディ ズッケーロ」とは、「砂糖のパン」という意味です。

この2品種は「シュガーローフチコリー」と呼ばれる品種群になります。

シュガーローフチコリーについて

「シュガーローフ」とは「棒砂糖━白砂糖を円錐状に結晶させた塊」(Wikipediaより)と解されていますが、
19世紀頃までは円錐状だった砂糖の塊のように、上の2品種が、結球した株の形が長くてすり鉢のように見えることから、「シュガーローフチコリー」と呼ばれるようになったとされています。

イタリア語の「パン ディ ズッケーロ」が「砂糖のパン」と訳されることから、英語圏に品種が伝わったときに
「シュガーローフ」と呼ばれたのかも知れません。

他のチコリーに比べ、苦味が少なく、サラダでも加熱してもおいしく食べられるようです。
イタリアでもミラノなど北部が栽培の中心になります。

04. 多菜畑農園で栽培していない品種

ここまでにご紹介してきた品種以外に、チコリーにはまだまだ多くの品種が記録されています。

以前、栽培したことのある品種とともに、お伝えします。この中には、今後、栽培する可能性があるものも含まれます。

05. 変異種

栽培中ちょっと変わった株がありました。

変異種について

このような、品種間の掛け合わせのような株の現れる頻度は、極めて低く、同じような株が連続して見られることはありません。
いわゆる、交雑種というのか、多くのバリエーションがあるチコリーの、種としての同一の証拠となるのでしょうか。
もちろん、ほんのわずかな株しか生育しませんし、特定の場所に見られるということもありません。

ご覧頂いている通り、カステルフランコ風の紋様が現れることがほとんどで、その中でも、比較的頻度が高いのは、
カタローニャ ギガンテ ディ キオッジャの株かと思います。