ラディッキオ ロッソについて

RADICCHIO ROSSO(ラディッキオ ロッソ)はリーフチコリーの品種群の内、ROSSA DI CHIOGGIA(ロッサ ディ キオッジャ)遮光栽培などでアントシアニンによる赤やピンク、紫に変色した葉を持つ品種の総称です。

またVARIEGATA DI CASTELFRANCO(ヴァリエガータ ディ カステルフランコ)など、黄色に赤系の斑紋が入る品種群もこのカテゴリーです。

各コーナーの内容について

ご紹介している各コーナーの記述内容は、誤りの訂正、表現の修正、追加の記述などを適宜行います。
大きな修正変更の場合を除き、履歴を明記することは、控えさせていただきます。

01. ラディッキオ ロッソの生育

ラディッキオ ロッソの「旬」は冬とされています。寒さ厳しい時期の方が、アントシアニンによる発色の株が出やすいことはその通りです。
しかし、暑さ厳しい夏期でも、ラディッキオ ロッソとしての株を得ることはできます。

春から秋にかけての生育

2022年の春からチコリーのミックスリーフの生産量を安定的に増やすため、直播密植栽培を始めました。

しかし、栽培量は増やすことができても、ある時期に収穫が生育速度に間に合わない、夏を迎える前にミックスリーフとしては大きくなりすぎる株が続出するとも予想していました。

結果として、その通りで、芝刈機を使っての収穫作業のスピードは上がったものの、商品化するための選別作業に時間がかかりすぎ、生産量を効率的に上げることはできませんでした。(2024年5月現在もこの課題は完全には解消できていません。)

そのようなある意味”無残な状態”の中、掘り出すような感覚ですが、ラディッキオ ロッソ状態になった株も一定量得ることができ、チコリーのミックスリーフとして、ある程度のクオリティを持たせることができました。

一般に葉菜類の栽培では、夏期に限らず、株と株の間に一定の隙間を作ります。通気を良くすることは、病害虫の発生を一定程度防ぎ、良い形の野菜を収穫できます。
(右の画像は、例外的に良好な生育をしているチコリーたちです。)

つまり、ラディッキオ ロッソ状態の葉が生まれるという事は、この良好な状態とは正反対で、チコリーの株たちは過酷でストレス一杯な状態です。
もちろん、チコリー達からのクレームの声は聞こえませんが、作業中には少しばかり申し訳けなさを感じます。

冬の生育

秋までに生育したチコリーの株は、それぞれの形で冬を迎えます。
もちろん、不要な葉は、枯れて排除されます。また、次の春を迎えるため、しっかりと根を張り、冬を過ごす株の形の中で、ラディッキオ ロッソも生育します。

チコリーの一部の品種がアントシアニンの生成により、ラディッキオ ロッソとなるのは、自分にとって害になる活性酸素の発生を抑え、自分自身の命を守ろうとした姿という事になります。

02. アントシアニンの生成

植物にアントシアニンができるという意味

アントシアニンは、サプリメントとしても商品化されるなど、良く知られたポリフェノールの一種です。
アントシアニンを含む野菜果実類として、赤ジソ、紫キャベツ、ナス、紫イモ、スイカ、ベリー類などがあげられます。

ポリフェノールとは

ポリフェノールは、野菜や果実に含まれる、フェノール基を2個以上含む構造を持つ色素成分の総称です。
ポリフェノールは、植物が厳しい環境や外敵から身を守る生体防御のために作り出した物質で、それが人体にも強い抗酸化作用をもたらします。
アントシアニンは、ポリフェノールの中のフラボノイド系に属し、アントシアニンの他、アピイン(セルリー、パセリなど)、クロロゲン酸(かんしょ、ゴボウ、ナスなど)、ラクチュコピクリン(レタス、チコリーの苦味成分)、ルチン(ケール、ホウレンソウ、アスパラガスなど)、イソフラボン(ソラマメ、エダマメなどマメ類)、シンゲロール(ショウガ)、ケルセチン(タマネギなど)が主な種類として挙げられます。

光合成効率の低下とアントシアニンの生成

秋が深まってくると、日照時間は短くなり、気温も低下します。気温の低下は、光合成の効率を悪くします。
そして、この時期の短くなった太陽光でも植物にとっては光が強すぎる状態になり、余分な光エネルギーが光合成の仕組みを破壊します。
そうなると、細胞内の葉緑体に蓄えられたクロロフィル(葉緑素:光を吸収する色素)から、細胞にとって有害な活性酸素が発生しやすくなります。
そのため、クロロフィルは比較的速やかに分解され、その分解された物質は翌年の資源として貯蔵されますが、その過程の中で、変色をした葉の細胞の液胞にグルコースが老廃物と共に蓄積します。

また、細胞の中で、エネルギー代謝の役割を持つミトコンドリアも、活動に衰えが出て、活性酸素の発生が増加します。

アントシアニンの素となる物質アントシアニジンとして液胞内にあり、グルコースと結合することで、アントシアニンが完成します。アントシアニンは活性酸素の発生を抑える抗酸化作用があり、植物の生命保持の役目をすることになります。
※落葉直前にわざわざアントシアニンを合成する理由は実は明確には分かっていません。

クロロフィルとは

クロロフィルは、光合成に使われる色素(光合成色素)の一種で、他の光合成色素のカロテノイド、フィコピリンとともに、細胞内の葉緑体のチラコイド膜にあります。葉が緑色に見える役割もしています。
この3種類の光合成色素はそれぞれ複数の種類がありますが、大半の陸上植物はクロロフィルは2種類、フィコピリンは持たず、カロテノイドの種類も少数しか持ち合わせていません。
その一方で、水中の植物(藻類)は多数の光合成色素を持っています。水中での光環境の複雑さによるものです。

03. アントシアニンについて

もともと植物色素の名称としては、アントシアンという固有名詞が使われていました。
アントシアニンの成分内容の説明はやや複雑ですので、主な部分をまとめてみました。

ラディッキオ ロッソのアントシアニンは、アントシアニジンのシアニジンに由来するものとされています。

アントシアニンの効能効果
このテーマについては、アントシアニンを取り上げている各資料、Webサイトから抽出しました。
専門的で複雑なところもありますので、主要な項目の列記だけにさせて頂きます。

・眼精疲労回復・視力改善効果(ロドプシン再合成による)
・抗酸化作用(ガンや動脈硬化の抑制)
・コラーゲン合成の促進作用
・毛細血管の保護強化作用
・抗炎症・抗潰瘍作用(潰瘍など粘膜の欠損を抑制、アスピリンの10倍)
・抗肥満作用
・抗糖尿病作用

皆様にお読み頂くテーマとしてはとても重要なところですので、調査研究を続けて参ります。

”悪者”活性酸素は良いこともするようです

人間にも植物にも悪の親玉のように思われている活性酸素ですが、特に植物についての最近の研究では、重要な役割を果たしているとされています。このコーナーでも、ラディッキオ ロッソのアントシアニンに「抗酸化作用」つまり活性酸素の不活性化の働きを上げています。

しかし、植物の種子の発芽促進に効果があることが判明しました。
活性酸素=ROS(Reactive Oxygen Species)は、1重工酸素(¹O₂)、スーパーオキシド(O₂⁻)、ヒドロキシラジカル(・OH)そして、過酸化水素(H₂O₂)の4種類があります。
この中でよく知られているのは、液体が消毒薬(オキシドール)として市販されている、過酸化水素です。
この過酸化水素が、発芽に係わっています。

植物のタネが発芽する際、活性酸素が発生することは以前から分かっていましたが、
それが、アブシシン酸(発芽を抑制する植物ホルモン)の働きを抑える役割を果たすことが最近の研究で判明しました。

従来は、タネの発芽は、発芽促進のジベレリンと抑制のアブシシン酸との植物ホルモンのバランスで起こるとされていましたが、そこに、ジベレリンを補助する形で、活性酸素が係わっているという事です。

そこで、実際のチコリー栽培で、低い発芽率のタネにジベレリン浸漬(しんし)処理後に、オキシドールを薄めたものを霧状に噴いて試してみようかと考えてしまいました。
もちろん、単なる思い付きでそんなにうまくいくはずはないと思いますが、何か、もしかするとという感じもしてしまいます。

(2023年10月28日追記)
その後、すでに発芽促進にオキシドールを使っていることは、実践されていることが分かりました。
もう少し詳しく調べて、多菜畑農園でも試してみたいと思います。

実際に活性酸素を利用した除草を農園で実行しています

太陽光熱を利用し、高温で光合成を抑制させ、活性酸素(ROS)除去機能を追い付かないようにすることで、”雑草”を枯らしてしまいます。
年間を通して、農園内の場所を変えながら繰り返すことで、全体的に雑草を減らすことができます。
根絶が難しいスギナやチガヤにも効果があります。

ビニールトンネル用の農ポリ(長さ約20メートル)を端を少しずつ重ねながら、並列に敷き詰めます。
古いハウス用パイプで固定させます。

晴天であれば、1日で枯れ始めます。

草の種類にもよりますが、夏であれば、晴れの日が3日程度で、地上の株はほぼ枯れてしまいます。

04. もうひとつのラディッキオ ロッソ・・・カステルフランコ類のイエロー

イエローカラーのラディッキオ ロッソ

チコリーの中で、遮光状態になって、葉の色がマゼンタ系ではなく、イエロー系にパープル系の模様が入った品種群があります。
VARIEGATA DI CASTELFRANCO(ヴァリエガータ ディ カステルフランコ)が比較的有名ですが、その結球種とされる
VARIEGATA DI LUSIA(ヴァリエガータ ディ ルシア)と同じく結球種のVARIEGATA DI CHIOGGIA(ヴァリエガータ ディ キオッジャ)があげられます。
もともとはラディッキオ ロッソ系のチコリーと同属異種のエンダイブ(Cichorium endivia L.)を掛け合わせた品種とも言われています。
このストーリーを書いている段階(2023年3月下旬)で、このイエローカラーが何の成分かを説明している資料に出会うことはできませんでした。今後、何らかの説明ができるよう努めます。

多菜畑農園でのチコリーの栽培では、中原採種所さんのタネ「チコリー(トレビス)」からも、遮光状態になった株の中で少ないながらイエロー系になる株も確認できます。

2023年現在、ホビー用のタネの少量の株から、偶然に収穫できたものだけの収穫出荷となっています。
大風呂敷を広げるようなご紹介となってしまっていますが、安定した栽培術の開発には、まだ時間が必要です。
ミックスリーフとしてのカラーバリエーションの面からも、何とか栽培面積を増やし、やり遂げたいと思っています。

黄色はアントシアニン類ではありません

アントシアニンについて調べて行くと、黄色はアントシアニンではないようです。
葉の色の変化を見ていると、クロロフィルの緑色の部分が黄色へと変化しています。

そのプロセスはまだ分かりませんが、それを仮説でも立てることができれば、量産化につながる可能性もありますので、
実際の栽培の中で、研究して参ります。

05. 本場イタリアのラディッキオ ロッソ

ラディッキオ ロッソ栽培の発祥地、イタリアでの歴史、風土、食文化などを紹介しようと考えました。

しかし、いろいろな資料に目を通すに連れ、簡単にまとめることが難しく思えてきました。
特に、ROSSA DI TREVISO TALDIVO / PRECOCE(ロッサ ディ トレヴィーゾ タルディーボ/プレート)については、長期にわたる栽培技術の開発の歴史とブランディング化への地域の人々の努力があります。

行ったこともないイタリアのこともほぼ知識がありませんし、イタリア語も分かりません。
少しずつ、書き加えさせていただき、すでに発表されている詳しい記事もありますので、リンクをお願いし、
助けていただこうと思います。

IGPとは

リーフチコリーの主な産地名のTREVISO、VERONA、CHIOGGIAは、
IGP(Indicazione Geografica Protetta インディカッツオーネ ジェオグラーフィカ プロテッタ 保護指定地域表示)の対象地域となっています。
これは、EU(欧州連合)の定めた農産物と食品に対する商標です。

対象になる製品の質と特徴、名称が生産地に由来し、生産、加工、特徴などが限られた地域内である場合に、その地域名で商標として認定されます。

たとえば、ROSSA DI VERONA(ロッサ ディ ベローナ)の名称で収穫・出荷するには、産地や生産方法、株の形状・品質などの基準を満たし、認定される必要があります。
一定の厳しい規定で、ブランディングを重視していることになります。