アカボシゴマダラ

01.アカボシゴマダラについて

もともと日本にいたチョウの一種です
アカボシゴマダラは、ベトナム北部から中国大陸と台湾、朝鮮半島、そして、奄美諸島(奄美大島、徳之島)に分布するタテハチョウ科に属するチョウの一種です。
もともと、日本では奄美大島と徳之島にだけ自然分布し、奄美諸島亜種(学名:Heatina assimilis shirakii Sirozu)とされています。現在も、奄美大島には確実に生息しています。但し、島内の全域で見られる種ではなく、生息地は限定的です。

1998年以降、関東地方でも神奈川県から埼玉県、東京都、そして千葉県でも生息が確認されるようになりました。
2023年現在、関東全都県、福島県、静岡県、山梨県、長野県、愛知県と北陸地方、関西にも広がっています。

しかしこれは、自然に飛来し、分布域を広げたのではなく、人為的に持ち込まれたもので、中国大陸に生息している原名亜種である中国大陸亜種(学名:Heatina assimilis assimilis Linnaeus)です。

2021年から農園にもよく飛来するようになり、個体数が多いとまでは行きませんが、確実に生息域を広げている印象です。

各コーナーの内容について

ご紹介している各コーナーの記述内容は、誤りの訂正、表現の修正、追加の記述などを必要に応じて行っています。
なお、大きな修正変更の場合はその内容を明記させて頂きます。

奄美諸島亜種と中国大陸亜種(原名亜種)との違い
種としては同じでも、両者いくつかの点で異なる点がありますが、明らかに違うのは、奄美諸島亜種には上の画像の「春型」が現われず、先にアイキャッチ画像でご覧頂いた「夏型」だけが発生することです。
中国大陸亜種にある春型は、和名「アカボシゴマダラ」とは結びつかない、白い基色に黒い翅脈のデザインで、赤の紋様がありません。全く別の種のチョウかと思えるほどです。
チョウ類には、春型と夏型が現われる種が数多くありますが、ここまで違う外観をした種は珍しい方です。

他にも、夏型でも、赤い斑紋の現われ方など、いくつかの違いがあります。

アカボシゴマダラの特徴
アカボシゴマダラは分類上、チョウ目タテハチョウ科に属する大型のチョウです。
よく見かけるアゲハ、クロアゲハ、キアゲハなどのアゲハチョウ科の仲間と比べると、飛び方は舞うようにゆったりとした姿です。
チョウの仲間は、種ごとに幼虫が食べる植物がほぼ決まっていて、アカボシゴマダラの奄美諸島亜種はニレ科のクワノハエノキを食べて育ちます。
一方、関東周辺の中国大陸亜種は、エノキを食べているようです。生息範囲を広げているのは、当然、餌となる植物が生育しているということです。

02.特定外来生物としてのアカボシゴマダラ

日本での中国大陸亜種について、環境省は2018年に特定外来生物に指定し、「捕獲、啓蒙・啓発活動による移入・拡散防止」を呼びかけています。要するに、なるべくこれ以上生息範囲を広げないよう、できれば駆除したいということです。

その理由は、日本に自然に生息している在来種の中で、食草が同じエノキであるオオムラサキ(日本の国蝶)、ゴマダラチョウ、テングチョウなどの生息に影響を及ぼす可能性があるとされています。
この3種のチョウの内、農園周辺に生息するのはゴマダラチョウですが、元々、たくさん見られる種ではなく、出現期に2,3回見られる程度です。

アカボシゴマダラの侵入により、ゴマダラチョウの生息に負の影響が出るかは、多菜畑農園周辺での観察では判断は難しいかと思います。

また、エノキについてはどこにでも生えている樹木ではありませんが、珍しいというほどではなく、何度かはゴマダラチョウを目撃していますので、農園周辺のどこかには生育していると考えられます。


小松貴氏大いに怒る!!

2014年に出版された「裏山の奇人ー野にたゆたう博物誌」で注目され、アリと共生する好蟻性生物の研究で知られる、気鋭の昆虫学者、小松貴氏は、NHKラジオでの講演で、アカボシゴマダラの人為的移入について、怒りをあらわにされていました。
2020年3月27日放送の番組「カルチャーラジオ 科学と人間」のテーマ「虫たちの不思議な世界 第12回 【ばらまくな外来種】」で「このアカボシゴマダラを持ち込んだ奴の名前とか全部知ってますけど、とんでもない奴ですよ!!」などと、果たしてNHKでこんな風に怒鳴って大丈夫かと心配になりました。
アーカイブで聴いて録音もしておいたのですが、パソコンが壊れ、正確な表現でご紹介できませんが、とても驚き、印象に残りました。
最近は、同じNHKラジオ「子ども科学電話相談」の回答者に加わっておられるようなので、なぜか安心しました。